パルディ天球図 より、こと座 Ignace Gaston Pardies, Wikimedia Commons

その2~日時計を使った方位の求め方~

「方位を求めよう」第2回は、道具を使って方位を求めるその1、日時計を使って方位を求めてみましょう。

太陽で調べよう

図1 日時計と影の向き

図1 日時計と影の向き

日時計は、おそらく人類が一番最初に作った時計ではないでしょうか? 太陽の作る影の向きで、現在時刻を知るという、単純で分かりやすい時計です。

まずは図1をご覧ください。これは、冬至、夏至、春分の、それぞれの日の、東京での棒の影の1時間ごとの位置を記録して、それらを結んでみたものです。

影の動きを結んだ線を見ると、

になっているのが分かります。なぜ、そういった影を描くのか、少し考えてみましょう。

影は、当然のことながら、太陽の反対側にできます。太陽の光が物に遮られて作られる訳ですから、影の長さと方向は、太陽の位置、高度によって決められます。

日の出とともに、棒の長い影が西側にのび、時間が経つにつれ、太陽が高度を上げて、棒の影もどんどんと短くなっていきます。正午ころ、一番短くなり、その後、太陽はだんだんと高度を落とし、影も伸びていくわけです。

方位の求め方その1で調べたとおり、季節によって太陽の昇る位置、沈む位置は変わり、

となりますから、たとえば夏至のころは日の昇るころ、沈むころの影は、東西方向よりも南に寄り、冬至のころは、同様に北に寄ります。

太陽の昇り、沈む位置と、正午に向かって縮み、またのびる影の長さの変化が組み合わさって、影の曲線が作られます。春分から夏を越えて秋分まではふくらんだ曲線、秋分から冬を経て春分まではへこんだ曲線を描くわけですね。

春分、秋分の日のころは、太陽が昇るときの影は、真西に向かって伸び、日が沈むときの影は、真東に向かって伸びていきます。

春分、秋分の日の太陽は、ちょうど赤道~天球の大円~上から地上を照らすので、影の移動は緯度線と平行になり、地上に描かれる影は直線になるわけですね。

影から方向を求めてみる

図2 影から方位を求める

図2 影から方位を求める

太陽の影の動きを調べてみましたが、実際に影を使って方位を求めてみましょう。これに必要なものは、まっすぐな棒、ひもの2つです。

まず、棒を立て、その棒を中心に円を描きます。1つでもいいんですが、影がその円を通るようにします(図2)

午前と午後、影が2回、その円の上を通過するようにすると、その2点を結んだ直線は東西方向、2点を結ぶ直線の中点と、棒を結んだ直線が南北方向を示します。

太陽は、真南にある時一番高くなり、午前と午後、昇りと降りは、左右がちょうど反対になるよう、高度が変化していきます。

影の長さがちょうど同じになる~太陽の高度が同じになる~点を結んだ線は一番高いところ(真南)から、東にも西にも同じ角度だけ離れているということですから、その2点を結んだ線は、真東と真西を結ぶ、東西方向を示しているということになります。

毎日、影が一番短くなる時刻~つまり太陽が真南にきた時刻~の影の長さを測りつづけると、年間で一番短くなる日、一番長くなる日が分かります。

夏至と冬至なわけですが、これで1年が経過した、ということも分かります。

紀元前の昔から、人々は地面に大きな塔~ノーモン(gnomon)を立てて、影の動きを~つまりは太陽の動きを~観察してきました。高いものでは10メートル以上のものもあるそうです。

棒やひもなどの簡単な道具から始まって、春分や冬至、夏至などの区切りになる日を決定し、だんだんと正確な暦を作っていったんですね。こういうことを知るたびに、人間ってすごいなあ、と単純に感動してしまいます。