パルディ天球図 より、こと座 Ignace Gaston Pardies, Wikimedia Commons

旧暦のいろいろ その2

前回に引き続いて、旧暦にかかわるいろいろな情報をまとめていきます。

六曜

最初に「六曜」です。

「六曜」というと、知らない、と言う方もいらっしゃるかもしれませんが、「大安」、「仏滅」、といえば、知らない人はいないでしょう。「大安」「赤口」「先勝」「友引」「先負」「仏滅」の6種類があるので、六曜と呼ばれています。

六曜は、もともとは中国の占いに用いられていたようですが、日本で使われるようになったのは明治になってからなのだそうです。現代でも、結婚式は仏滅を避けるとか、葬式は友引を避けるとか、それなりに需要がありますね。

この六曜も、旧暦を基準にして決められています。旧暦を基準にしているのに、なぜ、江戸時代には流行らずに、明治になってから流行り始めたのか、その理由を知るにはまず、下の表を見ていただきましょう。

表1:旧暦の毎月1日の六曜の定義
初日の六曜初日の六曜
 1月 先勝 7月 先勝
 2月 友引 8月 友引
 3月 先負 9月 先負
 4月 仏滅10月仏滅
 5月 大安11月大安
 6月 赤口12月赤口

旧暦1日は、「必ず」この六曜から始まります。そして、1日ごとに「大安」「赤口」「先勝」「友引」「先負」「仏滅」の並びで、その始まった六曜から順番で進んでいきます。

なので、旧暦では、同じ日が必ず同じ六曜になってしまいます。旧暦4月1日、10月1日は、必ず「仏滅」です。

決まった日に同じ内容になるのなら、占いとしては使えませんね。それが、江戸時代に流行らなかった理由でしょう。明治になって太陽暦になり、月の満ち欠けと暦が一致しなくなって、始めて占いとしての価値が出てきた、というところでしょうか。

でも、ここで書いたとおり、実際には規則正しく決められたもので、「七曜」月火水木金土日となんら変わりはないのです。そう大騒ぎすることもないようです。気分の問題というところでしょうか。

さて、ここで思い出していただきたいのですが、旧暦には「閏月」がありました。毎月の六曜の順が決まっているのなら、では、閏月の六曜はどうなるんでしょうか。

これも簡単で、閏がつかない月(前月)と同じにする、となっています。閏2月は、普通の2月と同じ「友引」から始まる、ということでいいようです。

まあ、なんにしても、迷信は迷信ですから、あまり深入りはしないにしましょう。

表2:ある旧暦の日の六曜の求め方
余り内容
大安
赤口
先勝
友引
先負
仏滅
旧暦A月B日の六曜  (A+B)÷6 の余りを求め、その余りを表2に当てはめる
例:旧暦12月14日 (12+14)÷6 = 4 余り 2 で「先勝」

潮周り

「潮周り」は、身近な暦関係の言葉として、海釣りや潮干狩りをする時などに気にします。「大潮」「小潮」などですね。この言葉も、旧暦の「日付」を用いて決められています。ではさっそく。

表3:潮周りの定義
日付 101112131415
潮周り
日付1617181920212223 24252627282930
潮周り

潮周りは、いつでもこの順番に1日から変わっていきます。旧暦の1日は必ず「大潮」11日は「若潮」なわけです。ここまでは六曜と同じ。でも、潮周りは六曜と違って、旧暦1日が大潮になる理由がきちんとあります。それは「月」です。

「潮周り」は、満潮干潮の差が大きくなるか、小さくなるかを目安としてあらわしたものですが、干満の差を大きくしたり、小さくしたりしているのは「月」です。ご存知の通り、新月満月の時は干満の差は大きくなり、半月の時は小さくなります。

新月、満月、半月の日をうまく表しているのが「旧暦」です。旧暦は、新月の日を1日として決めていましたから、旧暦を基準にすれば、潮周りも自動的に決まってしまいます。わざわざ「潮周り」などという言葉を使う必要はありませんでした。

ここから、「潮周り」も、明治以降に使われるようになった感じがします。国立天文台の暦解説ページによると、まさにその通り。何とか新暦に移行したい政府が、「漁業には潮の干満が必須」という声に応えるために、カレンダーに掲載したのです。

「旧暦」公ではない暦、とは言っても、世の中のあちらこちらに顔を出しているものです。私たちも、日々の生活の中で知らず知らずに「旧暦」を使っているのです。