内惑星たち
内惑星は、地球よりも太陽に近い惑星、水星と金星のことです。地球軌道の内側を回るので内惑星というわけです。
図1 内惑星
図1をご覧ください、またまたよくある、内惑星と地球、太陽の配置図です。
真中が太陽、外側の円が地球の軌道、内側の円が内惑星の軌道です。この図も、地球の北極側から見ていますので、地球や惑星は反時計周りに公転しています。
内惑星と外惑星の大きな違いは、惑星が地球軌道の外側へ来ることがないことです。地球の軌道の内側を回っているのだから、あたりまえですね。
そのため、衝(太陽の反対側へ来ること)や矩(太陽から90度離れること)はなく、太陽からあまり離れず、日の出前や日の入り後の数時間しか見ることができません。夜中の空高くある惑星に、内惑星はないということです。
そんな内惑星の現象名、月や外惑星で使っていた言葉とはまた違うものが出てきます。外惑星の用語と比較していきましょう。
現象名 | 定義 | 計算時の定義 |
---|---|---|
見える時間帯 | ||
外合 (Superior Conjunction) |
惑星と太陽が、同じ方向に見え、太陽の向こう側にあるとき | 太陽との地心視赤径差が0時間、かつ地心距離が1天文単位以上の時 |
太陽と同じ方向なので見えづらい | ||
内合 (Inferior Conjunction) |
惑星と太陽が、同じ方向に見え、太陽と地球の間にあるとき | 太陽との地心視赤径差が0時間、かつ地心距離が1天文単位以下の時 |
太陽と同じ方向なので見えづらい | ||
東方最大離角 (Greatest Eastern Elongation) |
外合の後、惑星が太陽の東側に一番離れたとき | 太陽との角距離が最大になるとき |
日暮れの西の空に見える | ||
西方最大離角 (Greatest Western Elongation) |
内合の後、惑星が太陽の西側に一番離れたとき | 太陽との角距離が最大になるとき |
明け方の東の空に見える |
外惑星の合に対応するのは「外合」です。太陽の向こう側、外側へ行ってしまうことから外合と呼ばれているのでしょう。惑星の位置関係として、内惑星で衝に対応するのは、内合ということになりますか。惑星が地球と太陽の間に入る、内側に来ることから内合と呼ばれているのでしょう。
外惑星、たとえば火星から地球を見たとします。火星から見て、地球が内合になる時、それは、地球から見た火星が、衝の時、という関係です。
続いて、内惑星にしかない用語の「最大離角」、これは、その名のとおり、惑星が太陽から一番離れる瞬間をいいます。外惑星の場合、太陽から一番離れるのは、太陽の反対側に来る衝、ということになりますが、内惑星の位置関係では矩に近い状態です。
上のとおり、内惑星は太陽からあまり離れませんが、この頃は、まぶしい太陽から離れるので観測がしやすい時期です。東方、西方とあり、東方は、太陽の東側に離れるということですから、日没後西の空に見え、西方はその逆、日の出前の東の空に見えます。
どちらが日没後か迷いますが、東方は、太陽に向かって東側にあるのだから、日没後に見える、と分かりますね。
留と最大光度
現象名 | 定義 | 計算時の定義 |
---|---|---|
留 (-) |
惑星の動きがとまるとき | 地心視赤径の変化量が0になるとき |
最大光度 (-) |
惑星の明るさが最も明るくなるとき | 惑星の光度が最大になるとき |
「留」については外惑星と同じです。ただ、内惑星のほうが地球よりも太陽を周る速度が速いですから、内惑星に地球が追い抜かれていく時に、留が起こります。
もうひとつの「最大光度」は、これも読んで字のとおり、一番明るくなる時を言います。この用語は、金星にのみ使われます。
惑星がいつ一番明るくなるのか、これは惑星によって違い、外惑星は衝の時が一番明るくなります。これは、距離が一番近くなるからですね。
ところが、水星は外合のとき、金星は、最大離角と内合の間が一番明るい時期です。これは、内惑星の満ち欠けが関係しているのです。
図2 内惑星の満ち欠け
この図はちょっと変です。
内惑星は、月と同じように満ち欠けをします。図2をご覧ください。
太陽の向こう側、外合の頃は、全部が光って見え、ちょうど満月状に見えます。地球に近づくにつれて、惑星は欠けていき、最大離角の頃、ちょうど半月状に見えます。
さらに近づき、内合の頃は、地球に近いので大きく見えますが、光っている部分が細い、三日月状になっています。
水星の場合、内合の時には1億Km、外合の時でも2億Kmと、他の惑星に比べると、距離はあまり変わりません。水星軌道1つ分、1億キロ程度の差です。距離が倍なので、大きさの違いも倍、光ってる部分が一番多いのは、地球に近い時よりも、外合のとき。なので、外合のころが一番明るく見えます。もっとも、外合の時は太陽に近いので、見ることはできませんが。
それに対し、金星は外合の時は2億5千万Km、内合のときは4千万Kmと、大きく違います。実は、惑星の中で地球に一番近づくのは、火星、ではなく金星なのです。大きさは、内合の頃は角度で1分、太陽や月の大きさの30分の1ほどにもなります。
2004年の6月に、金星が太陽の前を通る(通過している時がまさに内合ですね)、金星日面通過という現象がありましたが、その時、きちんと減光すれば、肉眼でも分かるほどの大きさです。
金星は、地球に近付くにつれてだんだん大きく見えてきますが、金星の夜の部分が広くなり、光ってる部分はどんどん細くなります。その二つのバランスの取れた、光っている面積が一番大きくなる瞬間に一番明るくなります。その瞬間を最大光度、としているわけです。
外惑星は衝の時、水星は外合のときが一番明るくなります。金星だけ、分かりやすい位置関係では一番明るくなりませんから、「最大光度」として用語を作ったのでしょう。
見頃の目安は?
内惑星の見頃は、やはり最大離角の頃でしょう。特に水星は、最大離角の頃でも太陽から30度離れることはないので、最大離角の頃でないと見ることができません。
金星の場合、最大離角から最大光度を過ぎる頃までが一番面白いと思います。とても明るく輝き、肉眼でも美しく見えますが、望遠鏡で見ると、白い三日月がはっきりと見え、毎日観測を続けると、どんどんと細くなり、またどんどん太っていくのがわかります。
この頃の金星は、観望会などで見せると、月だと思って「月がないのにどうして望遠鏡だと見えてるの?」と、尋ねられたりもします。
最大光度の頃の金星は、望遠鏡で必見です。