パルディ天球図 より、こと座 Ignace Gaston Pardies, Wikimedia Commons

外惑星たち

続いて惑星の現象説明に入ります。まずは月と同じ考えでいい外惑星から。

図1 外惑星

図1 外惑星

図1をご覧ください、これもよくある、外惑星と地球、太陽の配置図です。真中が太陽、内側の円が地球の軌道、外側の円が惑星の軌道です。

この図も、地球の北極側から見ていますので、地球と惑星は、反時計周りに太陽を公転しています。

外惑星の場合、地球との位置関係で起こる現象は、月と同じ、見比べてみてください。

月でいうところの「新月」が「合」、「上弦」が「東矩」、「満月」が「衝」、「下弦」が「西矩」となるわけです。

月と同様、現象を計算で求めるときの定義もまとめてみました。

注意が必要なのは、計算時の定義です。月の場合は地心黄道座標系でしたが、惑星の場合は、地心赤道座標系で求めます。

外惑星の現象名とその定義
現象名 定義 計算時の定義
見える時間帯

(Conjunction)
惑星と太陽が、同じ方向に見えるとき 太陽との地心視赤径差が0時間になるとき
太陽と同じ方向なので見えづらい

(Opposition)
惑星が、太陽と反対側に見えるとき 太陽との地心視赤径差が12時間になるとき
日暮れ頃昇り、夜半に南中
東矩
(-)
衝の後、惑星が太陽と90度離れたとき
太陽の東側90度
太陽との地心視赤径差が6時間になるとき
お昼頃昇り、夕方に南中
西矩
(-)
合の後、惑星が太陽と90度離れたとき
太陽の西側90度
太陽との地心視赤径差が18時間になるとき
夜半に昇り、明け方に南中

さて、この表、月とほとんど同じですが、月と違うのは上の4つの現象の起こる順番です。

と、回っていきます。

図2 ある期間内の月、太陽、惑星の移動距離

図2 ある期間内の月、太陽、惑星の移動距離

そう言われて改めて考えてみると、月は、新月のあと、月は夕方の空に見え始め、上弦の月から満月へと満ちていきます。外惑星の場合は、合になったあと、明け方の空に見え始めて、だんだんと昇る時間が早くなっていきますね。月と惑星、現象の発生順が逆なんです。 なぜでしょうか。

月も太陽も惑星も、基本的に星空を西から東に向かって移動していきます。

太陽や惑星に比べればずっと地球に近い月は、太陽や惑星よりもずっと早く移動し、太陽に追いつき追い越して、東に移動していきます。それで、新月(合)の次に上弦(東矩)が来るわけですね。

それに対し、外惑星は、一時的に東から西に動くことがありますが、基本的には太陽よりも移動速度が遅いので、太陽が惑星に追いつき追い越して、惑星は太陽の西に離れていきます。 そのため、合の次は西矩になるわけです。

見頃の目安は?

図3 外惑星と地球の距離

図3 外惑星と地球の距離

次に、外惑星の見頃について。これは月とは違って、いつでも見頃というわけにはいきません。惑星の場合には、位置関係によって地球との距離が大きく変わってしまうからです。

衝の頃には、太陽の反対側に惑星が来て、惑星と地球との距離は、一番近づきます。

それに対し合の頃は、太陽を挟んで向こう側に惑星が行ってしまうということですから、惑星~太陽間の距離と地球~太陽間の距離を足した距離、離れてしまうことになります。

2003年に大接近した火星の場合、衝の頃はだいたい6000万Km、合の頃はだいたい4億Kmと、実に6倍以上の変化があります。明るさは、-2.9等級から+1.8等級、大きさも、角度で25秒から4秒弱と、衝の頃と合の頃では大違いとなってしまいます。だからこそ「大接近」と騒がれたわけですね。

図4 衝と合での火星の見えかたの違い<br/>Stellar Navigator Ver.7

図4 衝と合での火星の見えかたの違い
Stellar Navigator Ver.7

天王星や海王星は、太陽からとても離れているので、1年を通じで大きさ・明るさは変わりませんが、木星、土星は、衝の頃と合の頃では、どちらも違います。大きく、明るく見えるということは、それだけ細かい様子などが分かるということです。

しかも、衝の頃は、夕方に昇り、一晩中観察することができます。木星型惑星は一般的に自転周期が短いのですが、木星にいたっては、10時間ほどで自転していますから、一晩のうちに、木星全体の様子を見ることもできてしまうわけです。

外惑星は、衝の頃が見頃、ということになるでしょうか。

留と接近

惑星の現象名とその定義
現象名 定義 計算時の定義
接近
(-)
地球と惑星の距離が最も短くなるとき 惑星の地心距離が最小になるとき

(-)
惑星の動きがとまるとき 地心視赤径の変化量が0になるとき

新しい用語が出てきました。「接近」と「留」です。これら2つは、内惑星、外惑星ともに同じ定義で起こる現象です。

まずは接近。この「接近」は、あとで出てくる、惑星と他の天体が、見かけ上近づく「接近」とは違い、地球と外惑星との距離が一番短くなる、「接近」です。

図5 外惑星と地球の衝と接近距離

図5 外惑星と地球の衝と接近距離

上の項で書いたとおり、衝の頃が地球と外惑星は一番接近しますが、厳密に言うと、衝の瞬間に一番接近するというわけでもありません。地球も他の惑星も、楕円軌道を描いて太陽の周りをまわっているために、衝と接近の時刻は、若干ずれてしまいます(図4)

とはいっても、ほとんどの外惑星は真円と言ってもいい程度のわずかな楕円のため、天文カレンダーにわざわざ表記されることはありません。唯一接近が表記されるのは、やはり火星です。

火星は、結構な楕円を描いて太陽の周りをまわっています。離心率0.0934、太陽に近づくところでは1億9千万Km弱、離れると2億2千万Kmほどまで離れます。火星の衝の時刻と接近の時刻は、日付が変わるほど違うことが多いです。

2003年の接近では、接近が8月27日19時、衝が8月31日6時でした。しかも、地球との距離変化は上で見たように大きく、直径は小さいため、少しでも大きく見たいという欲求から、火星については、衝と接近を別のイベントとしているのでしょう。

図6 留<br/>この図はちょっと変です。

図6 留
この図はちょっと変です。

もうひとつの用語「留」は、読んで字のとおり、留まるという意味、西から東に向かう、もしくは東から西へ向かう惑星の動きが、一時的に止まることを言います。

惑星は、太陽や月のようにいつも同じ方向へは動かず、逆に動いたりとまったり、こういう変な動きをするからこそ、「惑う星」という名前がついているわけですね。

「留」は、外惑星を地球が追い越していく時~つまり、衝の前後~に、地球と惑星の相対速度が0になる瞬間に起こります。ちょうど、2車線の道路で車が並んで走っている時のようなイメージです。

外惑星の場合、留は、西矩と衝の間、衝と東矩の間、の2回起こります。西矩を過ぎて、留になると、そろそろ見頃といった感じでしょうか。