パルディ天球図 より、こと座 Ignace Gaston Pardies, Wikimedia Commons

スペクトル

太陽の光をプリズムに通すと、光が分けられ虹色が現れるのはご存知のとおり。それは「スペクトル」と呼ばれます。

そのスペクトルをよく観察すると、たくさんの黒い線を見つけることができます。それは「吸収線」と呼ばれ、太陽にある「元素」によって作られます。1814年、フラウンフォーファーが発見した吸収線は、触ることができない太陽が何でできているか、を教えてくれるのです。

19世紀から20世紀にかけて行われた恒星のスペクトルの研究から、吸収線やその反対の「輝線」がどの元素に対応するか、その星の表面の状態、温度や重力の強さなどを知ることができ、恒星はいくつかの種類の分けられることが分かりました。

スペクトル型の特徴と有効温度
スペクトル型 特徴 有効温度(K)
O型 電離したヘリウム、炭素、珪素の線が特徴的。きわめて高温のため、元素の電離状態が進んでいる ~30000
B型 電離したヘリウムの線は弱まり、ヘリウムや水素の線が見える 30000~10000
A型 水素線が特徴的。カルシウム、マグネシウム、鉄、チタニウムなど、金属の線も現れてくる 10000~7000
F型 水素線は弱まり、電離したカルシウムの線が目立つ 7000~6000
G型 電離したカルシウムの線が非常に強く、分子による線も目立ってくる 6000~5000
K型 分子による線が特徴的で、金属線も強い 5000~3500
M型 K型と同様に分子線、金属線が顕著だが、酸化チタニウムの帯が特徴的3500~

上の表の上段から見ていくと、電離した原子=プラズマ、原子、分子と、表面の物質の様子が変化していきます。上段から下段に向けて、原子の運動がよりゆっくりになっていくのです。温度は原子の運動を表しますから、スペクトル型の変化は、星の表面温度の変化と考えることができます。上の表の上段ほど、温度は高くなります。

さらに、星の明るさも合わせて調べることで、その星の重力がどれくらいの強さなのかも分かるのです。

もちろん、すべての星が、この表とおりに当てはまるわけではありません。特異なスペクトルをもつ星もたくさん発見されており、そこから、また新しい恒星の姿が分かってきているのです。

星の明るさとスペクトルから、化学組成、星表面の温度、重力の強さが分かり、それを基礎として、恒星の研究は進められています。恒星研究の基礎がスペクトル型にあるのは、こういった理由からなのです。1

ちなみに「スペクトル(spectrum)」という言葉、かのニュートンが作ったそう。ニュートンの著作「光学」で、初めて用いられたということです。2

  1. 恒星の世界 P29
  2. 光学 P401