ケンタウルス座アルファ
上半身が人、下半身は馬、半人半馬のケンタウルス座の足に輝く星、その1。
恒星データ
Hipparcos 番号 | バイ エル 符号 | 赤径 | 赤緯 | 固有名 カタログ名 | 意味 | アルマゲスト名 | 実視 等級 | 絶対 等級 | スペク トル | 距離 (光年) |
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71683 | α CEN | 14h39.7m | -60゚50.1' | リギルケンタウルス | ケンタウルスの足 | 左足の膝の星 | -0.01 | 4.34 | G2V | 4.39 |
71681 | α CEN | 14h39.7m | -60゚50.4' | トリマン | 前の右足の端の星 | 1.35 | 5.70 | K1V | 4.39 | |
70890 | 14h29.8m | -62゚40.9' | プロキシマ | 最も近い | 11.01 | 15.45 | M5Ve | 4.22 |
データ出典:
バイエル符号・等級・スペクトル・距離:Hipparcos星表 絶対等級:独自計算 固有名・意味:星座の神話、IAU アルマゲスト名:アルマゲスト
ケンタウルス座は、梅雨のころ、日本からは南の地平線を駆けていくように見えます。日周運動で、お尻から進んでいくので、バックしてしまうのですが。
その前足には、1等星が2つ輝きます。その左側、ケンタウルス座アルファは、地球に一番近い恒星、そして、三重星系としても知られています。太陽くらいの星がふたつ、互いを回りあい、太陽よりもずっと小さな赤色矮星がひとつ、その2星の周りを大きく離れて公転しています。
ケンタウルス座アルファと太陽、地球とケンタウルス座アルファBの大きさ比べ
ケンタウルス座アルファ概要
明るいほうの「A、リギルケンタウルス」という星は、明るさもスペクトル型も太陽に似ています。もし、向こうから太陽を見れば、同じような星に見える、と、いうことですね。見える位置はカシオペヤ座の辺り。単純に、ケンタウルス座アルファの反対側を見ればよいのです。「B、トリマン」という星は、太陽よりも少し小さく、スペクトル型もK。
リギルケンタウルスもトリマンも、かつては、肉眼で見た、一つの星としての「ケンタウルス座アルファ星」につけられていた名前です。たまたま二重星だったので、国際天文学連合が恒星名を決めた時、Aをリギルケンタウルス、Bをトリマン、としました。SFでは、この星系全体を「トリマン」と呼んでいるものもありますから、SF好きは混乱しそう。
近い星たち
さて、この星は私たちに一番近い1等星でもあります。光の速さで4光年ちょっとしか離れていないのに、1等星にしか見えないということは、カノープスの逆で、あまり明るくない星ということ。絶対等級は4.34で、太陽より少し明るい程度。もし、この星が連星ではなくて、地球のような惑星があれば、生命が生まれていたかもしれません。年齢は、太陽が46億年なのに対して、65~70億年と推定されていて 1 だいぶ進んだ文明を持っていたかも。
ケンタウルス座アルファBに惑星が発見された、というニュースがありましたが、否定する論文も発表されており、確定はしていないようです。
ケンタウルス座アルファは三重連星、特にAとBのふたつは、近づくと11天文単位、土星軌道ほど、遠ざかると36天文単位、海王星軌道ほどしか離れていません。
ケンタウルス座アルファ伴星の軌道図
こんなに接近した連星でも、太陽系からの距離が近いので、小さな望遠鏡でもふたつの星に分けてみることができます。上の図を見ると分かるように、80年で互いを一周しますから、ちょうど一人の人間が一周するのを見ることができるかどうか、というくらい。日本から見られないのが残念です。いちばん離れる2060年ころは、角度で11秒ほど、いちばん近づく2037年ころには2秒まで接近します。2020年現在は、接近が終わり、少しずつ離れつつあるところです。
プロキシマ・ケンタウリ
三重星系の残り、ケンタウルス座アルファCはプロキシマという名前、「最も近い」という意味で、ケンタウルス座アルファABからさらに0.2光年ほど太陽系に近く、今のところ、本当にいちばん近い恒星です。この星は、赤色矮星と呼ばれる小さな星で、太陽の6分の1ほどの大きさしかなく明るさは11等級、ケンタウルス座アルファABから2度ほど南西に離れたところにありますが、肉眼はもちろん、小さな望遠鏡でも見ることはできません。
この星には、2つの惑星が発見されています。プロキシマのハビタブルゾーンの中を公転する、地球と同じくらいの質量(1.17倍)の惑星と、ハビタブルゾーンの外側を公転する地球の7倍程度の惑星。
ハビタブルゾーン=生命居住可能領域、内側の惑星には、生命が生まれているかもしれません。心配なのは、プロキシマは閃光星、フレア星と呼ばれていること。表面が時々爆発し数等級明るくなることで知られています。太陽のように大きな星ならば、表面の一部で起こるフレアが、小さいために星の表面全体で起こり、増光すると考えられます。強い放射線も出ますので、生命には悪影響です。
今では、地球のような環境だけではなく、エウロパやエンケラドゥスのような、厚い氷の下の海などにも、生命の可能性が考えられていますから、プロキシマの惑星環境に適応した生命が生まれているかもしれません。
- ↩Brightest Stars P124