かみのけ座

星座といっても微光星のあつまり、星を追うのは難しい。実は散開星団。

実在したという、エジプト王妃ベレニケの髪の毛。とてもきれいな髪の持ち主だったそう。夫のプトレ マイオス３世（アルマゲストのプトレマイオスとは別人）が戦争に出かけた際、その無事を祈り、美しい髪をアフロディーテの神殿にささげ、星座になりました。実在の人物に関係するものが星座になっているのは、このかみのけ座と、たて座だけです。

かみのけ座、とはよくつけたもので、はっきりとした星の並びがあるわけではなく、暗い星がぱらぱらとまとまっていて、一見雲のようにも見えます。まさにここは散開星団。太陽系から２７０光年ほどの距離にあり、近いので約５°の範囲に散らばっています。もう少し離れると、星団らしい姿になるでしょう。

宇宙の窓

しし、おとめ、うしかい、おおぐま、おまけにりょうけんと、春の有名な大きな星座の間にある、ぽっかりと明いた空の穴、といった感じのかみのけ座。この星座のβ星付近は、私たちの天の川銀河の北極にあたります。天の川銀河は棒渦巻銀河と考えられていて、横から見るとどら焼きのような形をしています。直径１０万光年なのに対して、厚さは数千光年しかありませんから、かみのけ座の方角、天の川銀河の北極方向にはあまり明るい星がないのも当然です。

空に開いた穴、とはよく言ったもので、天の川銀河の星が少ないということは、その外側がよく見えるということ。かみのけ座、その南にあるおとめ座には、たくさんの銀河が見つかっています。メシエカタログにあるだけでも、Ｍ６４、Ｍ８５、Ｍ８８、Ｍ９８、Ｍ９９、Ｍ１００と６個、私たちが買える望遠鏡で観察できるもっと暗いものも含めると、数十から数百の銀河があります。ここには、ふたつの銀河団があり、ひとつはかみのけ座の南側、おとめ座に近いあたりの「おとめ座銀河団」　距離は約６０００万光年、Ｍ８５からＭ１００を含む、私たちに最も近い銀河団です。

かみのけ座銀河団
The Coma Cluster of Galaxies
(C)Dean Rowe, APOD, NASA

もうひとつ、かみのけ座βのあたりには　「かみのけ座銀河団」もあります。こちらは、３億光年以上離れていて、同じかみのけ座にあるとは言っても、おとめ座銀河団とはまったくの別物です。

天文台の巨大な望遠鏡では、このあたりには数万の銀河が発見されています。

黒目銀河（Ｍ６４）
M64: The Black Eye Galaxy
(C)Andrea Tamanti, APOD, NASA

かみのけ座にある、メシエカタログのもうひとつの銀河、Ｍ６４は、距離が１６００万光年、おとめ座銀河団よりもずいぶん近いところにあります。この銀河、望遠鏡で観察すると、目のように見えるところから「黒目銀河」と呼ばれています。黒目の様子を観察するには大きめの望遠鏡が必要ですが、空のきれいなところでは、双眼鏡でも雲のような姿を見ることができます。

恒星データ