パルディ天球図より、こと座 Ignace Gaston Pardies, Wikimedia Commons

星座の大きさ

たとえば、「夏の大三角を探してみましょう」という夏休みの宿題が出たとします。さあ、いつ、どこを探せばいいんでしょうか。

星座を探してみる

図1 星座の大きさを測る

図1 星座の大きさを測る

どうやら本当にそういった宿題が出ているようで、毎年、夏休み期間中には、当サイトへも「夏の大三角」や「星座」「探し方」などという検索キーワードでのアクセスがたくさんあります。はじめて星座を探す時に困るのは、星座がいつ、空のどこに、どれくらいの大きさで見えるのかが分からない、ということでしょう。

いつ、どこに見えるのか、は、星座の本や星座早見盤、プラネタリウムなどを見ると、ある程度は分かります。けれども、星座の大きさ、星座が実際の空で、どれくらいの広さで見えているのか、は、意外とイメージしにくいものです。

百聞は一見にしかず、実際の空で見つけてしまえば当然分かるわけですが、はじめて探す時は、星座の本を見ても、プラネタリウムを見てみても、空で見える本当の大きさは分からないのが困ったところです。

いつ、どこに見えるのか、については、また別でお話するとして、今回は、星座の大きさのイメージ法を調べていこうと思います。

星座の大きさの比較対象

さて、星座はどれくらいの大きさで見えるものなのでしょうか。実際の空で見てみると、結構な大きさにびっくりすることがあります。これは、星座を探すための資料に、はっきりと分かる大きさの基準が持たされていないせいもあるのでしょう。

地図には、縮尺を表す数字や、地図上の距離をあらわすバー(正式にはなんていうんでしょう?)、標本写真には、タバコやら定規やら置きますね? ああいったものです。

星図、という星の地図帳には、地図でいう緯度経度を示す格子が入っていますが、星図ではいつ、どこに見えるかは分かりません。

星座を探す資料に、たとえば、ビルや電柱、木々など、基準となる対象を入れたとしても、カメラとその対象との距離で、基準対象そのものの大きさが変わってしまいます。この場合、いつでもどこでも誰でも同じ大きさに見える基準が必要になります。それを数学的に表したものが角度、ということになるわけですが、当サイトで角度といえば、『手の分度器

今現在ある、星座探しの資料に隠されている星座の大きさの比較対象から、手の分度器を使って星座の大きさを測ってみようと思います。星座探しの資料について、散々悪口を書きましたが、実は、きちんと大きさの比較対象が書かれているんですよ。

方位=角度

図2 夏の大三角<br/>星図: StellaNavigator Ver.7

図2 夏の大三角
星図: StellaNavigator Ver.7

右の図は、よくある星座解説図です。20時とすると11月始めくらいの西の空。秋も深まって、夏の大三角も西に傾いています。夏の大三角、どれくらいの大きさに見えますか? Pixelだと300Pixelくらいですが、そんな数字、星座の大きさを知るのには何の役に立ちません。

星座を探す資料には、必ず方位が入っていると思います。入っていないと、その図が空のどこかも分からない、星座探しには使えない図、ということになってしまいます。

解説図の方位は分かっているわけですから、その方位から、星座の大きさを調べる方法はないか、と少し考えてみます。

方位は、地平線1周=360度を、東西南北4つの方向で分割したものですね。西から北、北から東、東から南、南から西、各方位の間は、円1周=360度を4で割るわけですから、それぞれ90度づつ離れています。それぞれの方位が90度づつ離れているのですから、その間、西と北西は45度、西と西北西は22.5度、離れています。

方位を16個に分けた16方位の場合、各間隔は22.5度離れていることになります。この間隔を手の分度器で考えると、拳2つ分くらいになります。

星座解説資料の方位を示す文字間隔から、だいたいの大きさ基準が分かり、それを星座に当てはめて手の分度器で数えることで、実際の星座の大きさをイメージできるのです。

図2の方位表示から、実際に夏の大三角の間の角度を調べてみると、「こと」と「わし」の間は、西南西より少し北から西北西くらいまでですから、だいたい30度、「こと」と「はくちょう」の間は、1方位程度の間隔なので20度くらい、「はくちょう」と「わし」は、2方位程度に見えますから、40度くらいでしょうか。

本当の大きさは、「こと」と「わし」が35度、「こと」と「はくちょう」が25度、「はくちょう」と「わし」が38度くらいなので、結構いい線いっています。

実感、夏の大三角

では、手の分度器を使って、実際に夏の大三角の大きさを実感してみましょう。

夏の大三角形の大きさ
手の分度器10度

手の分度器10度

対象図2から測った間隔手の分度器実際の間隔
こと~わし間30度拳3つ分35度
こと~はくちょう間20度拳2つ分25度
はくちょう~わし間40度拳4つ分38度

空に向かって腕を伸ばし拳骨を作って止めてください。そこを「こと座」の位置とします。そのまま、拳を3つ分、下に下ろしてください。そこが「わし座」。元のこと座の位置から、横に拳2つ動かすと「はくちょう座」 上の表のこぶしの数分の長さの三角形ができるように、うまく拳を動かして、大きさを想像してみてください。具体的な大きさを想像すると、星座は結構大きい、ということがわかります。

こうして星座の大きさのイメージがついたら、今度は実際の空で探してみてください。星座の探し方の資料の位置に、今、イメージした三角形をそのまま当てはめてみましょう。目的の星座は、きっとすぐに見つけられるでしょう。

この方法、星座のだいたいの大きさを調べるのにいい方法だと思います。ほかの星の並び、冬の大三角や、秋の四角形、そして星座でも、手の分度器で大きさをイメージして、実際の空で探してみてください。