ケプラーとベツレヘムの星

ケプラーとベツレヘムの星

2020年12月に、木星と土星が大接近をしました。

12月21日には角度で0.1度、月の直径の5分の1まで接近して、肉眼ではもう、一つにしか見えなかったことでしょう。望遠鏡では、二つの惑星を同じ視野で確認できるチャンスでした。

木星が太陽を1周する、公転周期は約12年、土星に至っては約30年。動きの遅い二つの星が接近する、という現象が珍しいということ、お分かりいただけるでしょうか。約20年に一度、木星と土星はこうして接近をします。一生の間でも、このような星の並びは、頑張って4回、見られるかどうか。

しかも、特に今回の接近は本当に大接近。たいていは、角度で数度くらいの接近で、次に同じくらいの大接近が起こるのは、2080年。60年後ですから、見逃した方、残念でした。かくいう私も、見逃したクチですが。

ベツレヘムの星

この、木星と土星の接近を、ベツレヘムの星ではないか、という説を唱えたのは、「ケプラーの法則」として、惑星の運動法則に名を遺す、天文学者のヨハネス・ケプラー。約400年前の人です。

ケプラー<br/><a href='https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Johannes_Kepler_1610.jpg'>WikiMedia Commons</a>

ケプラー
WikiMedia Commons

ベツレヘムの星は、イエス・キリスト誕生の際、輝いた、と言われる星のこと。西の空にベツレヘムの星が現れ、東方の三賢者がそれに導かれてイエスの元を訪ねる。それがどんな星なのか、どんな現象が起きたのか、ということは、古くからいろいろな説が唱えられました。超新星やほうき星が現れたのだ、大きな流れ星が見られたのだ、など、様々な説があるものの、決定的なものはありません1

その諸説ある中で、ケプラーが唱えたのが、木星と・土星の接近です。紀元前7年6月から12月にかけて、木星と土星がうお座で3回、接近をしました。ケプラーは、珍しい木星と土星の接近が、イエスの象徴であるうお座で3回も起きた、その現象全体を、ベツレヘムの星、と考えたのです。

魚は、古くからイエスの象徴とされていたそうで、十字架よりも古い、魚をモチーフにしたキリスト教のシンボル(イクトゥス)があるのだそう。

でも、そんなに特別?

この説、あまり評判がよくありません。約20年ごとに起こる、という接近は、人の一生、という時間スケールでは珍しいですが、天文学の時間スケールでは、そう珍しくはありません。しかも、紀元前7年の接近は2020年のように1つに見えるほどには近づかず、「イエスの象徴のうお座で」というのも、後付けっぽい感じがしてちょっと弱い。私も、クリスマス番組の定番だし取り上げないと、という程度の認識でした。

ところが、あるとき、ちょっとしたことに気づいたのです。

日付離角
1226年  3月  5日0度2分
1623年  7月 17日0度5分
2020年 12月 21日0度6分
2080年  3月 15日0度6分
2417年  8月 25日0度5分
木星・土星大接近(0.1度以下のもの)
ステラナビゲータVer.7 による

上の表は、木星と土星が、2020年と同じくらい、0.1度以下に接近する日を計算した表です。上でお話ししたとおり、次回は2080年、60年後、ということですが・・・。前回は、というと、なんと400年前、1623年。

やっぱり特別だった?

1623年というと、ケプラーが生きていた時代です。惑星運動についてまとめた「宇宙の調和」の発表が1619年、亡くなったのは1630年。キリスト誕生のころまで、2000年近くの惑星の位置を計算し、木星と土星の接近を「ベツレヘムの星」としたケプラーですから、当然、1623年の接近を知っていたはずです。

この時は、太陽の近くで起きた現象なので、ケプラーが実際の空で観察するのは難しかったと思いますが、この現象から「木星と土星の接近こそが、ベツレヘムの星だろう」と、想像した、もっと強く「確信した」かも。

ケプラーは、惑星の動きを説明することに、一生を捧げた人ですから、ベツレヘムの星も惑星が関係している、と信じたかったのではないかと妄想します。

ケプラーが「確信した」かどうか、まったくの想像で根拠はありませんが、「1623年みたいに近づいたらいいなあ」と思いながら、この説を唱えたのかもしれません。

このことに触れている情報、裏が取れる情報を探したのですが、それらしいものも、指摘している人もいないようなので、ここにあげておきます2。もっと詳しく研究されている方がいらっしゃいましたら、ぜひお知らせください。

  1. Wikipediaぽく書くと「独自研究」ですが、個人的には、クリスマスのころ、西の地平線から立ち上がる十字架、北十字がベツレヘムの星だと思っています。なかなか象徴的だと思うのですが、この説の弱点は、毎年見られるということ。それに「十字架」だと、イエスは誕生前から、磔になることが分かっていることになりますし、そもそも十字架は4世紀以降にシンボルになったそうで、いかにも後知恵っぽい感じ。イエス誕生の時に輝いた、という、特別な星にはなりそうもありません。まあ、独自研究ですから
  2. 先取権を主張するものではありません