パルディ天球図 より、こと座 Ignace Gaston Pardies, Wikimedia Commons

その5~北斗七星を使って北極星を探そう~

さて、この「方位を求めよう」シリーズも、いよいよ星座を使って方位を求めていきます。

図1 北極星はどれ?  撮影:2004年6月15日21時頃 千葉市街地

図1 北極星はどれ?  撮影:2004年6月15日21時頃 千葉市街地

今までのこのシリーズで、だいたいの方位感覚はつかめるようになったと思います。その方向感覚を使って、「北の目印」、北極星を探してみましょう。

まずは有名どころ、「北斗七星」から探してみます。

右の写真は、2004年6月15日21時頃に千葉の市街地で撮った北の空です。北斗七星と北極星が写っています。見つけられるでしょうか? モニターが汚れていると、星だかモニターのホコリだかよく分からなくなります。モニターはこまめに掃除しましょう(笑)

余談ですが、星座を作る星は基本的に明るい星が多いですから、市街地の明るい空のほうが、かえって星座が探しやすかったりします。 プラネタリウムでもよく言うのですが、明るい星や、わかりやすい星の並びをまず見つけて、それを目印に他の星座を探していくのが探しやすいと思います。 市街地だからとあきらめないで、本当の空でもぜひ星座を探して見てください。

図2 北斗七星と北極星

図2 北斗七星と北極星

上の写真は、図1と同じものです。この写真で、北斗七星を探してみましょう。左上から左側にかけて、下向きの「ひしゃく」もしくは「スプーン」の形をした7つの星の並びがあります。これが有名な「北斗七星」です。

大きさは、ひしゃくの端から端まで25度くらい。手の分度器だと拳2つ半、もしくは、手のひらを広げた大きさよりも一回り大きいくらいに見えます。実際に手の分度器を空に向けてみてください、結構大きく感じられますね。紙やモニターで見ていると、星座は小さいイメージですが、実際の空では、びっくりするほど大きく見えます。

これも有名な話ですが、北斗七星は「おおぐま座」の一部です。熊の、背中からしっぽにかけての星並びのことを指していて、「北斗七星座」という星座はありません。

この写真には北極星も写っています。はたしてどこにあるでしょうか。では、北斗七星を使って北極星を探してみましょう。

図3 北斗七星を使った北極星の探し方

図3 北斗七星を使った北極星の探し方

図3は、図2を強調して見やすくしてみたものです。北極星の探し方を覚えて、図2でも探してみてください。

北斗七星を使って北極星を探すには、ひしゃくの水をくむ部分、スプーンの先の部分を使います。先の2つの星を結んで、水をすくう方向にその間隔の5倍伸ばしていくと、ぽつんと一つ、北斗七星の星たちと同じくらいの明るさの星があります。

これが「北極星」 北極星の見えている方向が方位の北になります。その精度は、実に角度の1度。今まで紹介したどの探し方よりも正確です。 しかも、北極星の高度をもとめることで、方位だけでなく、自分のいる場所の緯度も分かります。 昔、GPSなんかないころの船乗りさんたちは、北極星の位置と高さで、今、自分がどの方向へ進んでいるか、どの緯度にいるのか、調べたそうです。だからこそ、方位を求めるのに北極星を使うことにこだわるわけですね。

さて、北斗七星と北極星、どれくらい離れているのでしょうか。

北極星を探すために使う、北斗七星の先の2つの星は、角度にして5度ちょっと離れています。手の分度器だと拳の半分ですね。その間隔の5倍ですから、北斗七星と北極星は角度で25度ちょっと、正確には28度程度離れています。手の分度器で拳3個弱、北斗七星の大きさと同じくらいの間隔ですね。

先ほど手の分度器でイメージした北斗七星の先から、拳3つ分数えてみてください。北極星との間隔はそれくらいということになります。北斗七星と北極星の距離感覚も持っていると、あらぬ星を北極星だと思わないですみます。

まとめ

北斗七星の位置さえわかってしまえば、北極星は意外と簡単に見つけられます。

でも、この方位を求めるシリーズの冒頭で書きましたが、星座を探すために方位を知りたいのに、方位を調べるのに星座を使うのはナンセンスです。

とは言うものの、このシリーズを読んでいただければ分かるように、星座を使わないでも、さまざまな方法でだいたいの方位は知ることができます。

その方位感覚を使って、だいたいの北を求めておき、その方向にひしゃくの形をした星の並びを見つけることができれば、北極星を探し、正確な北を知ることができるわけです。

星座探しの本やWebサイトなどでは、すでにだいたいの方位感覚がある、という前提で話を始めている訳ですね。それもいいのですが、ちょっと不親切かな、と思い、このシリーズを始めたという訳です。

図4 北斗七星の動き

図4 北斗七星の動き

さて、北斗七星を使えば北極星が見つけられるようになりましたが、北斗七星は天の北極の近くにはありませんから、いつも同じ場所に見えているわけではありません。地球の自転、公転の影響を受けます。

右の図は、3月、6月、9月、12月の各1日20時に、東京で見た北斗七星の位置です。

これを見ると、北斗七星が使えるのは春から秋にかけて、しかも秋は、すぐに地平線に近付いて見ることができなくなります。12月にいたっては、ひしゃくの先しか地平線の上に出ていません。 これでは困るので、他にも、星座を使った北極星の探し方があります。

次回は、北斗七星以外の星座を使った北極星の探し方をご紹介します。

さしあたって、北斗七星が使えなくなる秋から冬にかけての探し方から始めましょう。