アンタレス

アンタレス

さそりの心臓、火星の敵。

アンタレスは元々赤い星ですが、地平線低くに見え、夏の夜のよどんだ空に光るので、ますます赤く見える気がします。

恒星データ

Hipparcos
番号
バイ
エル
符号
赤径赤緯固有名
カタログ名
意味アルマゲスト名実視
等級
絶対
等級
スペク
トル
距離
(光年)
80763α
SCO
16h29.4m-26゚25.9'アンタレス火星の敵アンタレスとよばれる赤い中央星1.06-5.28M1Ib+B2.5V604

データ出典:
バイエル符号・等級・スペクトル・距離:Hipparcos星表 絶対等級:独自計算 固有名・意味:星座の神話、IAU アルマゲスト名:アルマゲスト

火星のライバル

アンタレス、という名前は、「Anti-Ares」アンチ+アレス、「火星の敵」という単語がなまったものといわれます。 アンタレスのあるさそり座は、黄道十二星座のひとつ。アンタレスのすぐ北を、黄道、太陽の通り道が通っています。当然、月や惑星もさそり座を通過していきますから、ときどき、火星もアンタレスに近づきます。

火星とアンタレスを比較すると、明るさはアンタレスが1等級、火星は、地球に最接近時は-3等級、遠ざかると2等級ですので、火星の方が明るい。色については、どちらも「赤に近いオレンジ色」 二つの星が並んでいるときに見比べると、とても良く似ていると感じます。実際、火星の色とアンタレスの色は、星の色の観測でもよく似ているそうで1、同じような色の火星とアンタレスが接近すれば、ライバル同士、競い合っているように見えると思います。

火星は、地球との距離で明るさがかなり変化します。二つの星を見比べることで、火星が暗いときに接近すれば「今、火星は調子が悪そうだ」とか、火星が明るいときに接近すれば「火星は今絶好調だ」とか、星占いにつながりそうな発想も出てくることでしょう。それに科学的に意味があるのか、といえば、もちろんありません。占いは占い、信じる信じないは個人の自由です。

アンタレス概要

アンタレスと太陽

アンタレスと太陽

少し前まで、アンタレスの直径は太陽の230倍、などと言われていました。子供の頃に通ったプラネタリウムでは、恒星の大きさ比較のモデルが展示されていて、豆粒のような太陽の隣に、半分以上はみ出した「アンタレス 230倍」というのが印象に残っています。 ところが、観測技術が進歩し、アンタレスまでの距離が正確に測れるようになったことで、アンタレスの大きさはずいぶんと大きくなりました。現在考えられているアンタレスの直径は、太陽の700倍ほど。「火星の敵」と言う名前からも分かるように、スペクトル型はM1、表面温度は低くて3500k、ベテルギウスなどと同じ「赤色超巨星」です。

名前は「火星の敵」でも、本当の大きさを比べてしまうと、火星はおろか太陽ですら敵にもならない、というアンタレスです。

緑色の伴星

アンタレスは、黄道十二星座のひとつ、さそり座の星。ですから、太陽や惑星、そして月もアンタレスのそばを通過していきます。たまに、月がアンタレスの前を通過することがあり、そうなるとアンタレスは月に隠され、「アンタレス食」が起こります。

1819年4月3日、ウイーン大学のベルグ博士がアンタレス食の観測を行った際、月に隠さたアンタレスが再び姿を現す直前、6.7等級の暗い星が現れ、その5秒後にアンタレスが現れるのを観測しました。その後、確かにアンタレスには伴星があり、アンタレスにとても近く、アンタレスとの光度差が大きいので、なかなか見ることができない、という事が確認されました。アンタレスの伴星を見るには、15cm以上の望遠鏡が必要です。 アンタレスの伴星は、アンタレスの周りを878年で回る連星で、明るさは5.5等級、スペクトル型はB、ということなのですが、この伴星、緑色に見える、と言われます。スペクトル型通りなら、青白っぽく見えるはずですが、アンタレスが赤いので、その補色で緑色に見えるのでは? と考えられています。 伴星は今、アンタレスに近づいていっているところで、2150年頃にはアンタレスに最接近します。その頃は全く見えなくなってしまうでしょう。その後、だんだん離れていき、2300年頃には角度の2.5秒ほど、最大離角となります。

  1. Brightest Stars P217