シリウス
おおいぬ座のα星シリウス。全天で一番の明るさを持つ星です。
恒星データ
Hipparcos 番号 | バイ エル 符号 | 赤径 | 赤緯 | 固有名 カタログ名 | 意味 | アルマゲスト名 | 実視 等級 | 絶対 等級 | スペク トル | 距離 (光年) |
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32349 | α CMA | 6h45.2m | -16゚42.8' | シリウス | 焼き焦がすもの | シリウスと呼ばれる非常に明るい赤みがかった星 | -1.44 | 1.45 | A0m... | 8.6 |
データ出典:
バイエル符号・等級・スペクトル・距離:Hipparcos星表 絶対等級:独自計算 固有名・意味:星座の神話、IAU アルマゲスト名:アルマゲスト
その明るさから、日本でも「おおぼし」と呼んでいる地方があったそうですし、「シリウス」という名前そのものが「セイリオス=焼き焦がすもの」というギリシャ語から来ているといわれています。光度では-1.44等級、普通の1等星の10倍近い明るさがあり、実際の空で見ると本当に明るく、白くギラギラと輝く姿は、冬の寒空に光ることもあって刺すようです。
鋭い光から、東洋・西洋を問わずに、犬、狼などをイメージしたのでしょうか、中国では「天狼星」 英語でも「Dog Star」と呼ばれます。英語の呼び方は、「おおいぬ座」から来ているのでしょう。猛暑のことを英語で「Dog Days」と言うそうですが、太陽とDog Star=シリウスが同時に空にあるので暑くなるのだ、と言われてしまうほど明るい星です。
有名な話ですが、古代エジプトではナイル川の氾濫を知るために、この星と太陽が同時に昇ってくるのを観察していました。エジプトでは女神イシスの星として崇拝されていたようです。
シリウス概要
シリウスと太陽、地球とシリウスBの大きさ比べ
そんなシリウスですが、絶対等級では1.45等級、1等星の中では16番目と、実はさほど明るいわけではありません1。真の明るさがさほど明るくない星が明るく見える、つまり、地球に近い、ということ。ということで、シリウスまでの距離は8.6光年。
1等星の中では、ケンタウルス座アルファに次ぐ、2番目の近さです。直径は太陽の1.75倍、250万km程度、質量は2倍、スペクトル型はA1で、表面温度は1万度程度と考えられます。
実際の空でも白い輝きですし、スペクトル型でも白いはず、大気の影響を受けるほど高度も低くないのですが、アルマゲストには、「非常に明るい赤みがかった星」と書かれていることから、昔は赤かった、赤色巨星だった、という説もありました。
今では、とても明るい表現として「赤い」という言葉が使われただけ、と考えられています。
シリウスの伴星
シリウス伴星の軌道図
シリウスが赤かった、赤色巨星だった、という話に信憑性をあたえたのが、白色矮星の伴星。シリウスの周囲を50年で公転しています。
1844年、ドイツの天文学者ベッセルが、シリウスの固有運動を調べている際、よたよたと揺れながら移動していることに気がつきました。おそらくシリウスは連星で、その共通の重心を回っているのだろう、と予想しましたが、その相手が見つかりません。シリウスの距離や明るさから、質量の予想はついていましたから、そのシリウスを振り回すほどの質量がある星なら、見えないはずはありませんが、事実、発見できない。 ということは、質量の大きな小さな星がこの世には存在する、ということ。理論的には存在しているはずの、謎の天体だったのですが、1925年、ついに伴星が発見され、それがまさに「白色矮星」だということが分かりました。
シリウスの伴星は、太陽系に一番近い白色矮星です。見えないので分かりませんが、太陽系から半径50光年の範囲には、30個ほどの白色矮星があるそうで、意外と身近な天体のようです。
白色矮星は、星の進化では最終段階。太陽程度の質量の星が赤色巨星になった後、宇宙空間にほとんどのガスを放出し、高温の中心部分だけが残ったものと考えられています。
シリウスが赤い、というアルマゲストの記述は、この伴星の赤色巨星時代を言っているのだろう、というわけです。
でも、2000年で赤色巨星から白色矮星まで進化するとは考えにくいですし、なにより、放出したガスがどこにもないところから、この考えはおかしい、間違い、となりました。
- ↩太陽の絶対等級は4.82等級ですから、太陽に比べれは20倍以上も明るい。そんな星を「さほど明るくない」と言ってしまうのもシリウスに申し訳ない。シリウスは十分に明るい星です。