パルディ天球図 より、こと座 Ignace Gaston Pardies, Wikimedia Commons

星の名前

星には、いろいろな名前があります。星に興味のない人であれば、どれもみんな「星」と呼ぶでしょうが、ひとつひとつの星にも、さまざまな名前がつけられています。

私たちは、夕方始めて見つけた星のことを「一番星」と呼びます。「一番星」も星の名前、でも、その時その時の明るい星が一番星となるので、たとえば金星であったり、木星であったり、シリウスであったり、アルクトゥールスであったり、「一番星」の他に、別の名前も持っています。

星を詳しく観察していくと、明るい星暗い星、色がある星、同じ季節に見える星、星々の間を移動する星など、同じ星にも違いがあることに気づきます。違いがあれば名前をつける、自然な流れでしょう。

始めは、「赤い星」「明るい星」「惑う星」などといっていたものが、暦を知る必要性から星座ができ始め、その星座にあるどこそこの星、などという名前も付けられます。

固有名

「火星のように赤い→火星のライバル(アンチ・アレス)→アンタレス」というように、現在使われている星の名前、固有名は、そういったつけられ方をしたものがほとんどです。星座を形作る星では、その星座での位置を示す言葉、「デネブ」=「尻尾」 「リゲル」=「足」 「バテン」=「腹」 「ラス」=「頭」なども多く使われています。

星の固有名は、基本的に空には1つしかありません。そうでなければ、名前としての意味がありません。 ただ、「デネブ」のように、身体の一部を表すような名前では、複数の星についていることがあります。これも星座名をつけて、「はくちょう座のデネブ」といえば、1つの星になります。

符号

さて、時代が下って、より詳しく星の研究が進むと、固有名のない星たちを示さなければならないことが多くなってきました。目では1つにしか見えないのに望遠鏡で見ると実は2つの星だったり、目では見えない暗い星がたくさんあることが分かったり、明るさが変わる星、突然現れる星など、変わった星があることなど、それまで以上に星を系統立てて管理しなければならなくなります。

固有名の変形として始まったのが、それぞれに符号をつけていく、というやり方。古くは15世紀にピッコロミニという天文学者が星にアルファベットをつけたようですが、現在、ポピュラーに使われているのは「バイエル符号」 さそり座α星、オリオン座β星などというやつです。

ドイツの天文学者バイヤー(バイエルという呼び方がポピュラーですが)が、1603年に出版した星図の中で、星座を形作る星それぞれに、ギリシャ文字を割り当てたので、バイエル符号と呼ばれます。すでに400年も使われている、由緒正しい星の名前の一つでしょう。

カタログ番号

さらに、星座ごとに数字を割り当てた「フラムスチード番号」 位置を調査した全天の星に順番に番号付けた「SAO番号」 「Hipparcos番号」や、変光星、惑星を持つもの、近隣星など、研究用に選んだ星をまとめたカタログそれぞれで、個々の星に番号が振られています。当然、ひとつの星にたくさんのカタログ番号が振られているものもあります。混乱しそうですが、異なるカタログ間で同じ星のデータをつなぐには、複数のカタログに掲載されていると便利なのです。

星座探しと星の名前

友達の名前を覚えるように、星の名前を覚えることは星に親しむ第一歩ですが、このように、ひとつの星にはたくさんの別名があります。

別に、そのすべてを覚える必要はまったくなく、もちろん、星の名前をすべて覚える必要もありません。あれもこれも、と、暗記しようとせずに、身近に感じるものから順に進むのがよいと思います。

夕方の空に明るく見えるあの星は? おりひめ星は? 冬に見えるあの赤い星は? など、気になる星を見つけたら、その星の名前を調べてあげてください。

そして、その調べた星を、もう一度空で探してみることがとても大切。ふと見上げた空に見えるおりひめ星・ヴェガ、初冬の東の空に半年ぶりに出会えた赤い星・ベテルギウス、など、遠くにある星々が、とても身近に感じられると思います。