その1~太陽を使った方位の求め方~
方位を求める方法、まず最初は、道具も使わず、簡単でおおざっぱな方位の求め方からご紹介します。おおざっぱ、といっても、星座を探す目安にはなります。
太陽で調べよう
1999年ですから、もう20年以上も前ですが、しし座流星群が大出現するのでは? と騒がれたとき、その紹介ページを公開しました。その中に、太陽を使った方位の求め方も書きました。要は簡単な話で、「太陽が昇ってくるほうが東」「お昼に太陽があるのが南」「太陽が沈んでいくのは西」ということです。
けれどもご存知のとおり、太陽は季節によって昇ってくる場所、沈む場所がかわります。地球の自転軸が傾いているためで、それが、日本―――だけでなく地球全体に―――季節がある原因なわけですが、実際、どれくらい違うものなのでしょうか。そして、その差は修正できるのでしょうか?
ここでは、もう一歩踏み込んで、太陽の沈む位置から、もう少し正しい西の方角を求めてみたいと思います。想定している精度は真西から10度以内。なんの道具も持たない方法で、それなりな精度だと思います。
季節の違いと太陽の沈む方位
図1 日の沈む位置
上の図は、毎月20日ごろの、北緯35度付近の日の入りの位置を描いたものです。真ん中のオレンジの丸が太陽、空にある数字が何月か、地面にある白い数字が真西からの角度、水色がいわゆる方位です。
春分、秋分のころは真西に沈み、冬至、夏至の頃では、真西から実に30度も離れて沈んでいきます。太陽は1年かかって、真西(春分)から北へ向かっていき、西北西を越え(夏至)、ゆっくりと南へ向きを変えて真西に戻り(秋分)、 西南西を越えて北に向きを変え(冬至)、再び真西に戻ってくる(春分)わけです。
まとめると、
- 春分(3月20日頃)と秋分(9月20日頃)の頃は真西に沈む
- 冬至(12月20日頃)と夏至(6月20日頃)の頃が一番真西から離れ、その差は30度もある
- 春分と秋分の頃は変化が大きい
- 冬至と夏至の前後1ヶ月はあまり変わらない
ということが分かります。
太陽の沈む位置から真西を求める
さて、太陽の沈む位置からでは、最大30度も真西からずれてしまうことがわかりました。これを何とか修正できないものでしょうか。
春分、秋分のころは、いちばん動きが速く、2ヶ月で30度ほども動いてしまいます。けれども、真西を挟んで各15度ですから、おおざっぱに西の方角を求める、ということにはあまり問題はないでしょう。
冬至、夏至を挟んでの3ヶ月間は、真西からは離れていますが、沈む位置はほとんど変わりません。行ったり来たりの往復運動ですから、方向を変えるときは動きがゆっくりになります。この動きは、想像できると思います。
では、これらをまとめてみましょう。
月(基準は20日) | 11・12・1 | 2・10 | 3・9 | 4・8 | 5・6・7 |
---|---|---|---|---|---|
太陽と真西の角度 | 北に30度 | 北に15度 | ほぼ真西 | 南に15度 | 南に30度 |
手の 分度器 (親指立て) |
右に2つ |
右に1つ |
調整不要 | 左に1つ |
左に2つ |
もともと道具を使わずに西を求めるために作った表です。角度を測るのも「手の分度器」を使います。親指の先に太陽を合わせ、そこからこぶしで角度を測って真西を求めよう、というわけです。
1ヶ月単位で区切ると、一番早く移動するときでほぼ15度ですから、親指を立てたこぶしひとつずつの角度移動ということになります。
まとめると、
- 寒いときは右手、暑いときは左手ではかる
- 春と秋のお彼岸のころはそのまま太陽の位置
- 昼間が長いときは左手こぶし2つ分、日が短いときは右手こぶし2つ分
長い休みの取りやすい時期を選んでみると、
- お盆とゴールデンウィークのころは左手親指立てこぶし1つ分
- お正月、冬休みのころは右手2つ分
で、精度10度以下で、真西の方角が求められることになります。
他の方角は?
図2 身体の向きから方位を調べよう
さて、ここまで来れば、もう他の方位も分かったも同然ですね。求まった真西に向かって立ち、両腕を真横に水平に伸ばせば、左手側が南、右手側が北、後頭部が東、ということになります。
北極星を探すには、北の方向を調べないといけませんでしたが、太陽の沈む位置から北の目安は分かりました。これで、北極星や、他の星座たちもさがす準備ができたことになります。
注意とまとめ
太陽の沈む位置から方向を求める、いかがだったでしょうか?
この方法を使う上で、ひとつ注意があります。上であげた、日の入り時の太陽の位置と、真西との角度の差ですが、緯度によって少しずつ変わっていきます。
上の表は日本国内―――北緯35度±10度―――で有効と思ってください。それより北でも、南でも、日の入り位置と真西との差は変わってきます。極端な話、白夜のある地方では日の入り、というもの自体がなくなってしまいますから、まったく意味をなしません。
傾向として、緯度が大きくなるにつれ、日の入り位置と真西との角度は大きくなっていきます。なぜそうなのかは、みなさんも考えてみてください。それはまた、別の機会にでもお話しましょう。
以上で、太陽を使った方位の求め方は、ひとまず一段落です。次は、道具を使って方位を求めてみたいと思います。