その3~時計を使った方位の求め方~
「方位を求めよう」第3回は、道具を使って方位を求めるその2、 時計を使って方位を求めてみましょう。
図1 懐中時計(のつもり)
時計を使って方位を求める、といっても、時間を測ることから求めるわけではありません。時計の短針と、太陽の位置の関係で求めるというものです。ですから、太陽が出ていない夜間や、曇り、雨の日はつかえません。
今回は前回の日時計ではなく、普段普通に使っている、時刻を測る時計です。ただし、アナログ時計で、針がいわゆる普通回転の腕時計、懐中時計など、自由に持ち運べて動かせるものでないとダメです(図1)
この方法も、手の分度器同様、有名ですが、誰が考案したのか、私は不勉強で知りません。どなたかご存知の方、お知らせください。
時計と太陽から方向を求めてみる
図2 南を求める
図1の時計、時刻は10時8分くらい、時計屋さんに飾ってある時計のデフォルトの針配置ですね。さて、時計と太陽の位置から方角を求める方法ですが、とても簡単(図2)
- 時計を水平に構える
- 『短針』を太陽の方向へ向ける
- 『短針』と文字盤の『12』で作る角を2等分する線が、南北方角になる。
図1、2では、短針は『10』を過ぎたあたりですが、それを太陽のほうへ向け、短針と『12』で作る角を2等分すると、『11』のあたりが、南の方向となるわけです。
実際に野外で求めてみたのが図3、撮影地を地図で確認したのが図4です。地図は分かりやすいように180度回転させてあります。普通は上が北ですが、この地図は南です。
図3 現地での求め方 ロケ地:マザー 牧場
図4 地図で確認 地図:プロアトラスW2
この写真の撮影地はマザー牧場、図4の地図の『★』印のところから『↑』向きに、時刻は10時28分に撮りました。はたして、この写真から求めた「南」は実際の南の方向となっているでしょうか?
時計を水平にして、短針を太陽に向け、短針と『12』で作る角の二等分線が南の方向となるはずです。図3と図4を比較してみると、確かに南の方角が求まっているように見えると思います。
他の時刻では?
今、10時台を調べてみましたが、他の時刻でも南の方角が求まるのでしょうか?
図5 3時25分
図6 6時42分
上の図5は、3時25分、図6は、6時42分で調べています。
図5の3時25分というと、太陽は南西の空に見えています。イメージしてみてください。太陽に短針を合わせ、『12』との間をとると、確かに南です。
6時42分、夏の間はこの時刻、朝と夕方ともに太陽が見えています。
夏の朝、ちょうどラジオ体操が終わった頃には、太陽は東の空、もうだいぶ高くまで昇っています。夕方の6時42分には、まもなく日が沈もうかというころ、北西の空、だいぶ太陽が低くなっているころです。
朝は問題なく南が求まりますが、夕方の場合は、『12』と短針が作る角のとがったほう、鋭角を使うと、南が求まらずに北が求まってしまいます。午前6時より前、午後6時よりも後の時間帯は、『12』と短針が作る角の鋭角を使うと、南が求まらずに北が求まってしまうことになります。もちろん、反対側の鈍角は南を指しています。
それを気をつけなければなりませんが、どうやらこの方法、どの時間帯でもほぼ南を求めることができるようです。
求まる理由は?
ではなぜこの方法で南を求めることができるのでしょうか?
今回の求め方の、短針を太陽のほうに向ける、ということ、それは時計を分度器として使って、太陽のいる方位を角度で測る、ということと考えられます。何かを測るためには基準となるものが必要ですが、それを文字盤の『12』に担ってもらいます。なぜ『12』なのかというと、短針が『12』の位置に来たとき、太陽もほぼ南の空、一番高いところにあるからでしょう。
南の方向を求めたいわけですから、その方向が一番単純に求まるとき、つまり、『12』と短針が重なり、太陽も南にある正午を基準として考えよう、ということだと思います。
太陽は、1日に1回、東から昇り、正午に南に来て、西に沈んでいきます。1日に1回転ですから、1時間あたり角度で15度、動きます。もうひとつの要素、時計の短針は、『12』を基準にして1日に2回転します。こちらは1日に2回転ですから、1時間あたり角度で30度、動くことになります。
もうお分かりですね? 正午、太陽が南にあるとき~南中しているときには、短針も『12』のところにあり、1時間ごとに、太陽は15度、短針は30度動きます。短針は太陽の倍の速さで回転していくので、太陽が出ているどの時刻でも、短針を太陽へ向ければ、南は、基準にした『12』と短針との半分の角度、中間にあることになるのです。
時刻 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
太陽 | 105 | 90 | 75 | 60 | 45 | 30 | 15 | 0 | 15 | 30 | 45 | 60 | 75 | 90 | 105 |
短針 | 210 | 180 | 150 | 120 | 90 | 60 | 30 | 0 | 30 | 60 | 90 | 120 | 150 | 180 | 210 |
手の分度器 |
ということは、アナログ時計でなくても、時刻と太陽の位置がわかれば、南の方角が分かることになります。
短針の代わりとなる分度器が必要ですが、それはもちろん手の分度器を使います。正午から1時間ごとに、親指立ての拳1個分ずつ、太陽を基準に数えていけばいいことになります。
たとえば8時のときは、右手親指の先を太陽の位置にあわせ、『8、9、10、11』と4つ分右に動かしていけば、4つ目の拳の小指のあたりがだいたいの南、と求まります。
ただし、このとき、絶対に太陽を直接見ないように気をつけてください。目を傷める恐れがあります。
その精度は?
最後に、その精度について考えてみます。
時刻 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
計算の太陽 | 105 | 90 | 75 | 60 | 45 | 30 | 15 | 0 | 15 | 30 | 45 | 60 | 75 | 90 | 105 |
3月21日 | – | 88 | 79 | 69 | 57 | 41 | 20 | 6 | 30 | 49 | 63 | 74 | 83 | – | – |
6月21日 | 115 | 107 | 99 | 92 | 82 | 68 | 39 | 19 | 60 | 77 | 88 | 96 | 104 | 112 | 120 |
9月21日 | – | 87 | 78 | 67 | 54 | 37 | 14 | 12 | 35 | 53 | 66 | 76 | 86 | – | – |
12月21日 | – | – | 59 | 50 | 38 | 25 | 10 | 6 | 21 | 35 | 47 | 57 | – | – | – |
上の表2は、先ほどの表1で求めた太陽と、実際の太陽の位置を、それぞれの季節の代表ということで、春分、至、秋分、冬至の4日間についてまとめたものです。こうやって見ると、計算とはだいぶずれていますね。計算通りには行かないことが分かります。
一番ずれているのは夏至のころですが、このころは、日の出、日の入り頃以外、日中はほとんど役に立たない状態です。他の季節ではだいたい10度から20度程度の誤差でしょうか。
このずれの大きな理由は、太陽の動きと、方位との関係によるものです。ここでそのずれの理由を書かねばならないところですが、だいぶ長くなっていますので、別ページとして作成する予定です。
まとめ
時計を使った角度の求め方、いかがだったでしょうか。
夏至の朝夕ころに気をつけなければならないこと、誤差が20度くらいで、精度があまりよくないことを知っていれば、役に立つ方法だといえるのではないかと思います。
精度が多少悪くても、太陽さえ出ていれば方位を求めることができるというのは、大きな魅力ですね。