ベテルギウス
オリオンの右肩にある1等星。冬の寒空の赤い輝きはかえって寒々しく感じたりもします。
明るさとしては、ベテルギウスよりも、右下のベータ、リゲルのほうが明るいのですが、バイエルはこの星をアルファにしています。
四角形があったとき、人間の視線は左上から右下に向かって動くと言います。ひょっとすると、バイエルは「左上を一番にするのが自然だ」と思ったのかもしれません。
恒星データ
Hipparcos 番号 | バイ エル 符号 | 赤径 | 赤緯 | 固有名 カタログ名 | 意味 | アルマゲスト名 | 実視 等級 | 絶対 等級 | スペク トル | 距離 (光年) |
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27989 | α ORI | 5h55.2m | 7゚24.4' | ベテルギウス | 巨人のわきの下 | 右肩にある赤い輝星 | 0.45 | -5.14 | M2Ib | 427 |
データ出典:
バイエル符号・等級・スペクトル・距離:Hipparcos星表 絶対等級:独自計算 固有名・意味:星座の神話、IAU アルマゲスト名:アルマゲスト
ベテルギウス概要
ベテルギウスと太陽
ベテルギウスは見てすぐに分かるほど赤く見える星、1等星では、さそり座のアンタレスとこのベテルギウスの2つだけです。明るく見えるだけではなく、本当の明るさ、絶対等級も-5等級という輝星。赤く見えるのは温度が低い星、それでも明るいということは、星そのものが大きいということです。ベテルギウスの質量は太陽の15倍ほどですが、直径は600倍以上、もし、ベテルギウスを太陽の位置に持ってくれば、火星までの惑星は飲み込まれてしまうでしょう。
このように赤く巨大な星は、赤色巨星と呼ばれ、星の進化の最終段階にあると考えられています。
恒星の中心では、自身の重力によって1000万度以上の高温になっており、水素原子の核融合反応が起こっています。恒星はそのエネルギーで輝いていますが、核融合が始まって時間がたつと、水素核融合の生成物のヘリウムが中心にたまっていきます。そうなると、重力によってヘリウム核の温度が上がり、水素の核融合はヘリウム核の周囲で起こるようになり、その結果、恒星は膨らんでいきます。ベテルギウスは、さらにヘリウムの核融合が起こり、その生成物の炭素、窒素、酸素といった物質も核融合している星と考えられています。
赤外干渉計で撮影したベテルギウス
Astronomy picture of the dayより
©Xavier Haubois (Observatoire de Paris) et al.
水素の核融合から始まり、その生成物が次々に核融合を起こしていくなら、恒星はいつまでも輝き続けられそうですが、やはりそうはいきません。太陽よりもずっと重いベテルギウスのような星の中心では、温度が上昇することでさまざまな元素が核融合を起こし、最後の生成物として鉄が作られます。
鉄は、温度が上昇しても核融合することはなく、逆に分裂して、ヘリウムになってしまいます。その際に、周りの熱を吸収し圧力が急激に減少するため、恒星は自分を支えられなくなり、星を形作る物質が中心に向かって落下、中心核に衝突して外向きに衝撃波が発生し、星全体が吹き飛ぶ爆発を起こします。いわゆる超新星爆発、ベテルギウスは、もうまもなく超新星爆発を起こすと言われ、星の表面が収縮している様子も観測されています。
2019年冬、ベテルギウスが暗くなり、2等星になっていました。この明るさの変化が超新星爆発につながる、という訳ではないようですが、これからも目が離せない星の一つです。
ベテルギウスの超新星爆発を見てみたいような、でも、爆発してしまったら、美しいオリオン座は見られなくなって寂しいような・・・。