カノープス
関東からはギリギリ見えるカノープス。シリウスに次いで明るい星です。
りゅうこつ座のα星、元々は、アルゴ座という星座の一部、船の大黒柱、竜骨の星座です。日本では、沖縄や小笠原をのぞけばほとんどが地平線ぎりぎりにしか見えませんし、東北北部より北ではそもそも昇ってきませんので、とても見るのが難しい星です。
恒星データ
Hipparcos 番号 | バイ エル 符号 | 赤径 | 赤緯 | 固有名 カタログ名 | 意味 | アルマゲスト名 | 実視 等級 | 絶対 等級 | スペク トル | 距離 (光年) |
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30438 | α CAR | 6h24.0m | -52゚41.7' | カノープス | 明瞭なもの | カノープスと呼ばれる、他の舵にある2星の西星 | -0.62 | -5.53 | F0Ib | 313 |
データ出典:
バイエル符号・等級・スペクトル・距離:Hipparcos星表 絶対等級:独自計算 固有名・意味:星座の神話、IAU アルマゲスト名:アルマゲスト
カノープスは、ギリシャ神話の名水先案内人カノープス(ギリシャ語で「Kanobos」または「Kanopos」)の名前がつけられたもの。
関東の太平洋沿岸では「布良(めら)星」という名前があります。千葉県館山市にある布良沖で遭難した漁師の魂が見えているといい、この星が見えると荒天になるので、漁に出てはいけないとか。この星が関東で見えるということは、南海上までよく晴れているということ。冬に見える星ですから、北西の季節風が強く吹き、南海上まで晴れている日のことでしょうか。風が強ければ波も高く、操船が大変だったのかな、と想像したりもします。
逆に中国では、南極老人星とよばれ、とてもおめでたい星、これを見ることができれば長生きでき、平和が訪れ、国も繁栄する、と言われていました。
カノープス概要
カノープスと太陽、水星
スペクトルはF0ですので、白っぽい色に見えるはずですが、日本では地平線に低いため、赤い色に見えることが多いようです。南半球では、空高くに見えますので、本来の色、白に見えます。
この星は、本当に明るい星で、絶対等級は-5.53、光度は太陽の15000倍、1等星の絶対等級では、デネブ、リゲルに次いで3番目の明るさです。310光年のかなたにありますから0等級ですが、もしシリウスのところで輝いていたとしたら、-8.5等級、昼間でも見えますし、夜、空の暗いところでは、カノープスの光で影ができることでしょう。
星の、ある一定の面積から出る光の量は、その輝きの元が同じ物理法則である以上、そんなに変わるものではありません。カノープスがこんなに明るいということは、つまりは光を出す面積が大きいということ。この星の直径は、太陽の65倍(=9000万km!)もあると考えられています。太陽の位置に持ってくれば、水星が表面近くを回るといったところ。光も熱も多すぎて、地球に生命など生まれる環境ではありません。
恒星とはいえ、長い時間がたてば、見える位置も明るさも変わっていきます。シリウスやアルクトゥールス、アルデバランなどは、数十万年で1等星ではなくなってしまいますが、カノープスは、500万年前から500万年先まで、1等星であり続けるそう。今から370万年前には、地球から177光年と今の半分くらいの距離にあって、明るさも-1.86等級だったようです1。
カノープスは質量が太陽の8倍ほどもありますから、太陽よりもずっと短命で、数億年しか輝くことができません。このまま地球から見えなくなる前に、赤色巨星になるのでしょうか。
そんな先の未来ではなく少し先の未来の話をすると、1万年後には南極星になるようです。地球の歳差運動で、北極星、南極星は変わっていきますが、西暦1万3000年ころには、南極星がカノープス、北極星はヴェガという、明るい2星が示極星になるようです。もっとも、今の文明がこのまま続いていけたとしたら、現在と同じように、北極星、南極星には、あまり意味がないかもしれません。
なんにしても、天文マニアの時間スケールは、普通の人よりも5桁ほど大きいようですね。
- ↩The Brightest Stars P114