パルディ天球図より、秋の星座 Ignace Gaston Pardies, Wikimedia Commons

秋の星座探し

秋の星空は、その季節に似て、少しさびしい感じに見えます。

秋の夜空<br/>9月20日 24時<br/>10月20日 22時<br/>11月20日 20時

秋の夜空
9月20日 24時
10月20日 22時
11月20日 20時

1等星は南の空に1つだけ、西には夏の名残りの天の川、その流れは北へと続き、暗めの星がポツポツと輝く空には、けれども星座神話一の「古代エチオピア物語」の星座たちが隠れています。

プラネタリウムでの星座解説では、このお話を紹介するかしないかで、紹介星座がガラッと変わる季節です。

ペガスス

まずは、神話紹介をする、しないに関係のない、秋の星座探しの目印を紹介しましょう。

秋が深まっても、夏の大三角は西の空高い所に見えています。夏の大三角から、視線を左側、東の方へ移していくと、腕を伸ばして開いた手のひらよりも大きな、星でできた四角形が見つかります。

秋の四角形、秋の四辺形と呼ばれる四角形ですが、それを身体に持つのはペガスス座。ペガサスとして有名ですが、ペガサスは英語読み、ペガススはラテン語読みなのだそう。星座名も「学名」なので、ラテン語読みが基本のようです。

この季節の星座の星は暗いものが多いので、秋の四角形を目印に探すのがよいでしょう。

まずは、エチオピア王家の神話に登場する星座から。

アンドロメダ

ペガススのお腹の星は「アルフェラッツ」 「馬のへそ」という意味です。

その馬のへそが頭に輝いているのが、アンドロメダ座。古代エチオピアのお姫様、物語のヒロインで大変美しい女性、ということなのですが、その頭にあるのが「馬のへそ」 しかも、鎖でつながれた生贄の姿が星座になっていて、本当にかわいそうなお姫様です。

アンドロメダの腰のあたりには、有名な「アンドロメダ銀河(=M31)」があります。

エチオピア王家の星座たち

エチオピア王家の星座たち

ペルセウス

ペガススのおへそ、アルフェラッツから、アンドロメダ座の腰、足と星をつないで、さらにその先の2等星をつなぐと、その周りの星で「人」の文字を描くことができます。都会の空では少々難しいですが、これがペルセウス座です。

勇者ヘルクレスのひいおじいさんにあたるペルセウス、鎖で繋がれたアンドロメダを助けだしたヒーローです。

左手に持つ「メドゥーサの首」は、見るものすべて石に変えてしまうという恐ろしいもの。そこに輝く2等星「アルゴル」は、周期的に明るさが変わる「変光星」です。

カシオペヤ

アンドロメダの北側、5つの星がジグザグに並んで輝きます。アンドロメダ座やペルセウス座よりも見つけやすいこの星の並び、北極星探しに使う星座のひとつ、カシオペヤ座です。

神話では、アンドロメダのお母さん、この人が余計なことを言わなければ、アンドロメダは苦労をせずに済んだのですが。

ケフェウス

カシオペヤのジグザグから、さらに北に目を移すと、3等星4等星の暗い星たちで作る5角形があります。エチオピア王の姿、ケフェウス座なのですが、神話でも星座でも、どうにも影の薄いお方、プラネタリウムの星座解説でも、はしょられることが多い王様です。

くじら

ペガススの4角形に戻って、東側の2つの星を結び、南に伸ばしていくと、2等星が見つかります。かつてはデネブカイトスと呼ばれたこの星、現在は「ディフダ」と呼ばれています。「二匹目の魚」という意味。別名の「デネブカイトス」の「デネブ」はしっぽ、「カイトス」はくじら。「クジラの尻尾」という意味。ここから

星をつないでいくと、くじら座ができますが、都会の空では見つけるのは難しい。

アンドロメダを食べに行ったものの、ペルセウスにメドゥーサの首を見せられ、哀れ石になってしまった怪獣です。

星占いの星座たち

星占いの星座たち

ここまでが、エチオピア王家の星座。この神話を詳しくお話しないとしても、秋の星座探しの目印のペガスス、有名な銀河のあるアンドロメダ、北極星探しのカシオペヤははずせないでしょう。

くじら座もそのひとつですが、秋の星座には、水にかかわる星座がたくさんあります。秋の水の星座は、秋の星占い星座でもあります。

うお

秋の四角形の南側、東側には、魚が一匹づつ隠れています。星占い最後の星座、うお座ですが、明るい星でも4等星、都会の空では見つけるのはまず無理の、12星座の中で発見難易度がいちばん高い星座でしょう。ペガススを目印に探すしかありません。

みずがめ

うお座の右側、西側には、みずがめ座があります。星占い星座も秋の空にあるものは、見つけるのに苦労するものばかりなのですが、この星座も3等星が2つだけ、あとは暗い星ばかりです。空のきれいなところでは、4等星と5等星4つで作る「三ツ矢」マークが目印になります。

やぎ

みずがめのさらに西には、2つペアの星がさかさまの3角形を描く、やぎ座があります。やぎ座は、夏と秋のちょうど中間にある星座で、紹介の時季が難しいからでしょうか、プラネタリウムでもあまり取り上げられない星座な気がします。私が勤めていたプラネタリウムの投影機には、やぎ座の星座絵表示ボタンがありませんでした。プログラムを作って表示可能にしたので、ムキになって紹介したものです。

みなみのうお

最後に秋の1等星がある星座を紹介。

ペガススの四角形の東側の辺の星で、くじら座を探しましたが、その反対側の辺、西側の星を結んで南に延ばしても、明るい星が一つ見つかります。秋のただ一つの1等星、みなみのうお座フォーマルハウトです。周りには明るい星がなく、ぽつんと輝くこの星は、さびしげに見えます。季節を感じる星のひとつです。