パルディ天球図 より、こと座 Ignace Gaston Pardies, Wikimedia Commons

2万8千年後 ~ケンタウルス座アルファ~

日本からはなかなか見ることができない星のひとつ、ケンタウルス座アルファ。半人半馬のケンタウルス座の前足に輝く星です。

ケンタウルス座アルファ

ケンタウルス座アルファ

固有名はリギルケンタウルス。太陽系から4.3光年、一番近い恒星系としても知られています。

この星は三重星で、それぞれケンタウルス座アルファA、B、Cと名前がついています。AとBの距離は平均で太陽と天王星くらいで近いのですが、Cはずいぶんと離れてABペアとの距離が0.16光年以上もあります。1周には50万年ほどかかると考えられ、そして、Cは現在太陽系側にあるので、ケンタウルス座アルファA、Bよりも、太陽系に近い。そこで、「プロキシマ・ケンタウリ」と呼ばれています。「プロキシマ」とは、「一番近い」という意味です。

このケンタウルス座アルファ星系、近い星ですから、その分動きも早いはず、さっそく動きを調べてみましょう。

恒星データ

Hipparcos
番号
バイ
エル
符号
赤径赤緯固有名
カタログ名
意味アルマゲスト名実視
等級
絶対
等級
スペク
トル
距離
(光年)
71683α
CEN
14h39.7m-60゚50.1'リギルケンタウルスケンタウルスの足左足の膝の星-0.014.34G2V4.39
71681α
CEN
14h39.7m-60゚50.4'トリマン 前の右足の端の星1.355.70K1V4.39
7089014h29.8m-62゚40.9'プロキシマ最も近い11.0115.45M5Ve4.22

データ出典:
バイエル符号・等級・スペクトル・距離:Hipparcos星表 絶対等級:独自計算 固有名・意味:星座の神話、IAU アルマゲスト名:アルマゲスト

ケンタウルス座アルファ

ケンタウルス座アルファ

上の図を見ていただくと分かりますが、この星の動きは本当に早い。20万年で、天球を半分移動してしまいます。今から10万年前には、ぼうえんきょう座に3等星として見えています。距離は14光年。同じ10万年前には、おおいぬ座シリウスが太陽系から12光年のところにあって、明るさは-0.6等級。絶対等級3等級の差が、この明るさの違いというわけです。

シリウスよりも暗い星とは言っても距離が近づけば明るくなり、5万年前頃には1等星、太陽系に近づくにつれて星空の中の動きも早くなっていきます。

プトレマイオスがアルマゲストを作った2千年前には、今の位置から4度ほど東側にあり、ケンタウルスは前足をぐっと開いて、おおかみを槍で刺していたのです。

究極の二重星?

もちろん現在も、1年あたり角度の7秒ほどの速度で移動をしていて、今から4千年後の西暦6000年頃には、隣のハダルと0.5度弱まで接近します。

リギルケンタウルスとハダル

リギルケンタウルスとハダル

満月1つ分隔てて、-0.2等級で黄色いアルファ・リギルケンタウルスと、0.6等で青白いハダルが輝く、明るさも色もすばらしい二重星になるでしょう。望遠鏡で見る、はくちょう座の二重星アルビレオや、アンドロメダ座の二重星アルマクのような、色のきれいな二重星を肉眼で見られるようになるのです。

今、生きている人には見ることができない、という意味では4千年後も100万年後も一緒ですが、この話題での4千年は、本当にすぐ先の未来といった感じです。

ちなみに、ハダルは、太陽系から525光年離れており、数千年単位では、その位置はほとんど変わりません。

最接近

ハダルから離れて、さらに2万年とちょっと、現在からは2万8千年後、ケンタウルス座アルファは太陽系に3.2光年まで接近をします。そのときの明るさは-0.7等級、うみへび座の南、ポンプ座の、明るい星が少ないところで光っているでしょう。その1000年ほど前には、プロキシマが0.1光年近い、3.1光年まで接近をしますが、この星の絶対等級は15等級、3光年まで近づいても10等級にしかならず、肉眼で見ることはできません。

その後は、うみへびの身体をなぞるように進み、4万年後には、うみへびの心臓の星「コルヒドラ」のそばを通過して、10万年後にはふたご座の頭の上辺りに2等星で輝くでしょう。9つの首を持つうみへびは一時期、元々の心臓の星「コルヒドラ」と、この星とでダブルハートとなるので、未来のヘルクレスは苦労をしそうです。