110万年前 ~第一次輝星時代~
120万年前頃から100万年前頃までを、独断で「第一次輝星時代」と名づけてみました。
110万年前 『夏』
この20万年ほどは1等星が20個以上、最盛期110万年前頃には、-2等級という超輝星を2個も含む、26個もの1等星があったのです。現在から前後100万年では唯一の時代、マイナス符号のついている星が6個もあり、見ごたえたっぷり。
上の図は、110万年前の『夏』の空ですが、西の空には、これから接近するうさぎ座ゼータが-2等級になったところ。その下、同じくこの時期に明るかったHip25240という星は-1.1等級、スピカが1.0等級、レグルスは2等級ですが明るい星が集まっていて『春』1の星空としては賑やか。
南の空には、さそり座のアンタレス(1.1等級)と、さそりの尻尾のところにもHip116250(0.9等級)という1等星が、また、北の空にはおなじみのはくちょう座アルファ・デネブ(1.3等級)と、オリオン座ミュー(0.9等級)、こぐま座ベータ・コカブ(0.7等級)が1列に並んでいます。ケフェウス座からカシオペヤ座にかけては、2等星がごろごろ。
この時代の最輝星アスケラは120万年前のページでも見ましたが、最接近は終わったものの、まだ-2等級で『秋』の空。すぐ近くにはエリダヌス座アルファ・アケルナルも-0.2等級で並んでいます。
『冬』の空にも1等星が5個、南天にも6個と、どの季節にも1等星がありました。
110万年前 『冬』
1等星
位置(J2000) | 位置(J2000) | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
順位 | 名前 | 明るさ | 距離 (光年) | 赤径 | 赤緯 | 順位 | 名前 | 明るさ | 距離 (光年) | 赤径 | 赤緯 |
1 | アスケラ | -1.97 | 11 | 22h 8.0m | -31°31′ | 14 | ベラトリックス | 0.96 | 180 | 5h40.1m | +11°54′ |
2 | ζLEP | -1.64 | 6.4 | 13h39.7m | +11°10′ | 15 | ベクルックス | 0.97 | 310 | 14h40.1m | -51°35′ |
3 | カノープス | -1.16 | 240 | 5h18.2m | -61° 6′ | 16 | スピカ | 1.04 | 270 | 14h16.3m | – 1°23′ |
4 | Hip25240 | -1.07 | 6.9 | 13h36.3m | – 7°34′ | 17 | Hip45856 | 1.06 | 40 | 12h23.6m | -53°39′ |
5 | アケルナル | -0.21 | 110 | 22h36.4m | -26°18′ | 18 | アンタレス | 1.12 | 620 | 16h42.2m | -19°30′ |
6 | リゲル | -0.01 | 710 | 5h12.0m | – 8° 1′ | 19 | Hip87261 | 1.16 | 50 | 13h56.7m | -47°44′ |
7 | ベテルギウス | 0.04 | 350 | 5h14.5m | + 3°17′ | 20 | デネブ | 1.26 | 3200 | 20h38.8m | +44°48′ |
8 | アクルックス | 0.51 | 280 | 13h55.6m | -55°52′ | 21 | ファクト | 1.30 | 140 | 5h39.9m | -20°15′ |
9 | ハダル | 0.58 | 520 | 15h12.1m | -51°11′ | 22 | αTUC | 1.31 | 97 | 1h50.3m | -11° 6′ |
10 | コカブ | 0.74 | 69 | 17h33.5m | +60°49′ | 23 | Hip32842 | 1.34 | 11 | 3h50.9m | + 1°26′ |
11 | アダラ | 0.93 | 330 | 6h53.8m | -29°53′ | 24 | αRET | 1.34 | 65 | 20h 4.2m | -48°53′ |
12 | μORI | 0.94 | 35 | 20h11.2m | +52° 4′ | 25 | ミルザム | 1.36 | 380 | 6h28.6m | -17°46′ |
13 | Hip116250 | 0.95 | 11 | 17h46.6m | -37°59′ | 26 | τPUP | 1.44 | 92 | 5h24.6m | – 1°51′ |
けれども、この明るい星の多い空も長くは続きません。ここから20万年後、今から90万年前には、1等星の数が20個を切り、一番明るい星も、-1.1等級のカノープスとなってしまいます。上の1等星の表の「距離」の部分を見ていただくと分かりますが、太陽系から50光年以内の星が多くあります。下の、太陽系に近い星ベストテンにも、1等星が5個ランクイン。太陽系に近づいてきたので、1等星の数が増えているというわけです。
太陽系に近い恒星ベストテン
位置(J2000) | |||||
---|---|---|---|---|---|
順位 | 名前 | 明るさ | 距離 (光年) | 赤径 | 赤緯 |
1 | ζLEP | -1.64 | 6.4 | 13h39.7m | +11°10′ |
2 | Hip25240 | -1.07 | 6.9 | 13h36.3m | – 7°34′ |
3 | Hip32842 | 1.34 | 11 | 3h50.9m | + 1°26′ |
4 | アスケラ | -1.97 | 11 | 22h 8.0m | -31°31′ |
5 | Hip116250 | 0.95 | 11 | 17h46.6m | -37°59′ |
6 | Hip7599 | 2.02 | 11 | 9h 7.3m | – 5°58′ |
7 | Hip100111 | 7.90 | 15 | 7h 1.4m | -30°18′ |
8 | Hip80337 | 3.41 | 17 | 9h24.2m | + 8°38′ |
9 | Hip15799 | 4.48 | 18 | 20h12.0m | -45°56′ |
10 | Hip30939 | 2.87 | 18 | 12h25.7m | +44°23′ |
近づいて明るくなる星たちは、また、暗くなるのも早いもの。ここから20万年後、今から90万年前には、近い恒星ベストテンのメンバーはずいぶんと入れ替わり、太陽に近い星も少なく、1等星の数が減ってしまうというわけです。
明るい星の少ない時代の話は追々していくこととして、今は、この明るい星の多い空をお楽しみください。
- ↩『春』や『夏』という表示は、現在の春や夏に見えている空、という意味です。それぞれの時代の季節に見える空は、地球の歳差運動によって変わってしまいますが、このコンテンツ内では、星の位置を解説するために『』つきで表現します